赤ちゃんの嘔吐や吐き戻しの原因や対処法は?【専門家監修】

 専門家監修
公開日:2018/05/31
更新日:2019/07/05
赤ちゃんの嘔吐や吐き戻しの原因や対処法は?【専門家監修】
監修
澤田雅子先生
澤田こどもクリニック院長

この記事では、赤ちゃんが吐く原因や受診する場合の目安、吐いたときのケア方法などを解説。大人にとって嘔吐は苦しく、めったに起きないことですが、赤ちゃんは月齢が低いほど、ちょっとしたことでおっぱいやミルクを吐きやすいものです。突然「ゲボッ」と吐くと心配になるかもしれませんが、たいていは心配のない嘔吐の場合がほとんどです。ただ中には、病気が原因で嘔吐することも。小児科医に取材し、詳しくお伝えします。

赤ちゃんが突然吐く原因は?

赤ちゃんが突然吐くのは、決して珍しいことではありません。吐く原因はいくつか考えられますが、たいていは心配のないケースが多いものです。

おもな原因は、赤ちゃんの胃の形や胃の入り口のしまりがゆるいこと

カーブがついている大人と違い、赤ちゃんの胃はストンとしたとっくり形をしていて、入り口のしまりもゆるやかです。そのため、ゲップをしたときや授乳後に体を動かしたときなどに、はずみで吐くことがよくあります。

ときどき口の端からタラッと母乳やミルクがたれるのは、「いつ乳」または「吐き戻し」といい、心配いりません。また、胃の入り口のしまりが特に弱く、授乳後にダラダラと多めに吐いてしまう赤ちゃんもいますが、1歳ごろまでに自然に治る場合がほとんどです。

こうした生理的な原因で吐く場合は、赤ちゃんの機嫌がよく食欲があって、体重も少しずつでも増えていればまず心配いりません。

赤ちゃんが吐いた時の、病気との見分け方は?

赤ちゃんの病気で嘔吐の症状を伴うものは、いくつかあります。そういった病気にかかると、たいてい嘔吐は1回では済まず何度も吐いたり、嘔吐以外の症状を伴うことも多いのです。吐いてしまう病気の種類や受診の目安を知っておきましょう。

吐く回数や吐き方などで、さまざまな原因が考えられます

授乳直後に少し吐くいつ乳(吐き戻し)と違い、一度、胃などの内臓に入ったものを吐くことを「嘔吐」といいます。嘔吐の原因は、生まれつきの病気などで胃や腸のどこかが詰まり、通過障害が起きていたり、ウイルスや細菌に感染して消化管に炎症が起きていたりすることが考えられます。さらに、脳内での出血や血腫により脳が圧迫されている場合などにも嘔吐が起きます。

元気だった赤ちゃんが突然嘔吐を繰り返してぐったりしたり、頭頂部にある大泉門がはれたりしているときは、要注意です。特に、5~15分間隔で激しく泣いて嘔吐をくり返し、顔色も悪い場合は、「腸重積症」が疑われます。この病気の処置は一刻を争うので、救急車を呼んで大至急病院へ行きましょう。

また、1日に何回も激しく嘔吐し、体重が増えないときは、「肥厚性幽門狭窄症」など生まれつきの消化管の異常が考えられます。

一般的に、ウイルス感染による胃腸炎で吐く場合、吐き気はそう長くは続きません。吐いていてもだんだんおさまってきて、少しずつでも水分がとれていれば慌てなくても大丈夫です。

ただ、嘔吐に加えて下痢もひどく、吐き気のために水分を受けつけなくなったようなときは、脱水の心配があります。すぐに受診しましょう。

さらに、夏場に多い細菌性胃腸炎は、吐き気だけでなく高熱や下痢を伴うので、脱水を起こす危険性が高くなります。吐き気以外の症状が重いときには、細菌性胃腸炎を疑って早めに受診しましょう。

【赤ちゃんが吐くときに考えられる病気】

風邪

吐き気のほか、くしゃみ、鼻水、咳などの症状を伴います。

髄膜炎

高熱が出て、赤ちゃんはとても不機嫌になりぐずり続けます。頭頂部の大泉門がふくらみます。

急性脳炎・脳症

嘔吐が続き、意識がぼんやりしたりひきつけたりします。

噴門弛緩症

授乳後に、飲んだものの大半を吐きます。

腸重積症

主に生後6か月前後の赤ちゃんに見られます。急にぐったりと元気がなくなり顔色が悪くなり吐いたり、いちごジャム状の血便が出ることもあります。

肥厚性幽門狭窄症

乳児期早期の赤ちゃんの病気で、授乳後に飲んだものを噴水のように勢いよく大量に吐きます。

消化管閉鎖症

生まれた直後から吐き、お腹がふくれてうんちが出なくなります。

胃軸捻転症

胃がねじれるために上腹部がパンパンに張って、吐き気と腹痛が見られます。

ウイルス性胃腸炎

嘔吐のほか、下痢も激しく熱が出ることもあります。ロタウイルス胃腸炎の場合は、白っぽいうんちが出ることも。嘔吐が治まった後、下痢は数日続きます。

細菌性胃腸炎

激しく吐き、下痢や高熱を伴います。

食物アレルギ

特定のものを食べたときに吐きます。

【赤ちゃんが吐くときの受診の目安】

●夜間・休日でも急いで病院へ

・嘔吐が続き、ぐったりしてきた
・頭を強く打った後で、たて続けに吐く
・不機嫌で、間隔をおいて激しく泣き、顔色が悪い
・おしっこが減り、ぐったりしてきた
・高熱とともに吐き、ひどく不機嫌
・嘔吐のうえ下痢を伴い、水分を受けつけない

●診察時間内に病院へ

・生後2週間ごろから、授乳後に噴水のように勢いよく吐く
・吐くことが多く、体重の増えが悪い
・吐き気がどんどん強くなっている

●家で様子を見てOK

・授乳後やゲップのときなどに、よくタラッと吐く
・くしゃみをしたり体を動かしたはずみで1回吐いた
・咳込んだ拍子に吐いた

赤ちゃんの下痢を伴う嘔吐の原因は?

赤ちゃんが吐く病気で下痢も伴うものは、たいていウイルス性胃腸炎であることが多いものです。これは、胃腸がウイルスに感染して起こる急性の胃腸炎(いわゆる、おなかの風邪)です。

ウイルス性胃腸炎の代表は、ロタウイルスとノロウイルス

急性胃腸炎のおもな原因は、冬にかかりやすいロタウイルスとノロウイルスがあります。

どちらのウイルスも感染力が強く、集団生活でかかった子がいるとあっという間に広がりますし、子どもからパパ・ママなど家族へうつることも多いものです。また、どちらもウイルスの種類が多いため、赤ちゃんが免疫を持っていないと、1シーズンに何回もかかってしまうことがあるため注意が必要です。

症状は、とにかく嘔吐と下痢が激しいので、体内の水分と電解質がどんどん失われていき、短時間で脱水が進んでしまう危険が高くなります。

脱水症を予防するには、何より水分補給が大切です。下痢や嘔吐がひどい場合、飲ませるのは水分と電解質を効率よく吸収できる経口補水液が最適です。

嘔吐がひどくて一度にたくさん飲めないときは、ティースプーン1杯(約5cc)くらいを5分おきくらいにこまめに飲ませることが大切です。

赤ちゃんが吐いた時、熱がないなら問題はない?

赤ちゃんが吐いたとき、熱などの症状がなければ心配ないと思いがちです。ただ、吐く回数が多く、吐いた後の様子がいつもと違うときには受診が必要なケースも。吐いたときには、その後の様子をよく見ておくことが大切です。

嘔吐を繰り返し、全身状態が悪い時はすぐに受診を

赤ちゃんが頭を強く打ったことで、頭蓋内出血が起こったり血腫ができたときには、熱がなく風邪などの症状もないのに吐くことがあります。この場合、一度吐いたくらいでいつも通り赤ちゃんが元気にしているなら、急を要するものではありません。

ただ、頭を打った後でたて続けに吐き、顔色が悪い、目の焦点が合わずもうろうとしている、ぐったりしてきた、などのときは大至急病院へ行きましょう。

また、ごくまれですが脳腫瘍ができていて、脳を圧迫するために嘔吐することもあります。この場合は、腫瘍のために脳の中の圧力が高まって、吐き気だけでなく頭痛がすることもあり、赤ちゃんは不機嫌になります。意識がはっきりしない、けいれんを起こしたなどのときには、一刻も早く受診してください。

脳腫瘍が進行すると、意識障害や手足のけいれんを起こすこともあります。赤ちゃんが頭を打った様子がないのに、吐くうえ意識がはっきりしない、けいれんを起こしたなどのときには、早めに受診してください。

赤ちゃんの母乳やミルクの吐き戻しはいつまで?

赤ちゃんが授乳後に吐き戻すのは、おもに低月齢のころがほとんどです。月齢が上がるにつれて、だんだん吐き戻すこともなくなってくるでしょう。

生後3ヶ月過ぎれば、吐き戻しはおさまってきます

赤ちゃんは、胃の形や胃の入り口のしまりがゆるいことなどから、もともと吐きやすいものです。しかも、月齢が低いころは脳の働きが未熟なために、満腹感を感じて飲む量を調節することができません。そこで、おっぱいやミルクをいくらでも飲んでしまいがちです。そのため、飲みすぎた量をゲップや体を動かした拍子に吐いてしまうことがよくあります。

ゴクゴクと勢いよく飲んで吐き戻しをするタイプの赤ちゃんは、母乳やミルクを一気に飲ませないようにすることがコツです。授乳するときは、ときどきおっぱいや哺乳びんの乳首から口を離させて、休みながら飲ませるといいでしょう。

また、授乳後にゲップをさせるときは、いきなり縦抱きにするのではなく、ゆっくりゲップの態勢をとらせるようにしてから背中をさすり、ゲップを出させます。

赤ちゃんの吐き戻しは、大人が思うほど赤ちゃんは気持ち悪いわけではないようです。授乳後に毎回吐くようでも、タラッと吐く程度でその後は赤ちゃんがケロッとしていつも通りの様子だったら、むやみに心配しなくて大丈夫です。

赤ちゃんが吐いた時の対処法は?

吐いたときは、次の吐き気を誘発しないようにすることがポイント。また、体内から水分が失われるため水分補給も大切です。じょうずなケアの方法を知っておきましょう。

吐いたら口の周りや耳を拭きます

口の周りについたものをきれいにふき取りましょう。寝たまま吐くと、吐いたものが耳の中に流れ込むこともあるので、耳もチェックしましょう。放置しておくと外耳炎の原因になる心配があります。

衣類、シーツ類も取り替えて清潔に

吐いたものが衣類などについたままだと不潔ですし、臭くて吐き気を誘発する原因になります。吐いたら着替えさせて、汚れたシーツも交換しましょう。たびたび吐くときは、シーツの上にバスタオルなどを敷いておくと安心です。

寝かせる時は、顔を横向きに

いつ吐くかわからないときは、上体をやや高くして寝かせ、顔を横向きにします。こうすると、目を離したすきに吐いても、気道に吐いたものがつまる心配が少なくなります。

吐くときは抱き起こして

嘔吐しているときは赤ちゃんも苦しいので、抱き起こして背中をさすってあげましょう。体を起こすと、吐いたものが気道につまる心配もなくなります。

水分補給は少量ずつ、回数を増やして

嘔吐が続いていると脱水の心配がありますが、一度にたくさん飲ませるとよけいに吐きやすくなってしまいます。吐き気がおさまったら、1さじずつ、吐かないことを確かめながら、回数を多く飲ませましょう。

飲ませるものは、甘い果汁などより味のない白湯や麦茶のほうが吐き気が起きにくいでしょう。

離乳食、母乳・ミルクは無理せずに

ウイルス感染が原因で起きている吐き気は、長くても1~3日くらいで自然におさまります。強い吐き気があるときは、離乳食は中断し、母乳やミルクは吐かないか様子を見ながら飲ませます。白湯や麦茶、経口補水液は飲ませる努力を続けましょう。吐き気がおさまってからも、離乳食は少量から再開しましょう。

子どものアセトン血性嘔吐症とは?

赤ちゃんが吐いたとき、インターネットで「子ども 吐く 原因」などの検索ワードで調べると、「アセトン血性嘔吐症」という病名が目につくことがあります。子どもが吐く病気ということで、気になったママやパパもいるでしょう。アセトン血性嘔吐症について解説します。

嘔吐を繰り返す病気ですが、赤ちゃんはまずかかりません

アセトン血性嘔吐症は、以前は「自家中毒」などとも呼ばれ、熱や下痢を伴わずに嘔吐をくり返す病気です。はっきりとした原因はわかっていませんが、脳の嘔吐中枢が何らかの原因で刺激されている状態と考えられているようです。

体がとても疲れたときや、風邪をひたとき、イヤなことを経験したときなどに起こることが多く、おもに2歳以降の幼児にみられます。嘔吐の発作を何度も繰り返し、尿を調べることで診断できます。どうしても水分が飲めなければ、小児科では脱水予防のために輸液の点滴などを行いますが、年齢があがるにつれて自然に治っていきます。赤ちゃんがかかることはほとんどありませんから、むやみにこの病気を心配しなくていいでしょう。

一部画像出典:『はじめてママ&パパの病気とホームケア』(主婦の友社 刊)

文/村田弥生

監修
澤田雅子先生
澤田こどもクリニック院長
1991年東京大学医学部小児科入局。国立小児病院新生児科、愛育病院小児科、東大病院小児科アレルギー外来などを経て、2003年に澤田こどもクリニックを開業。明るく親しみやすい人柄と、わかりやすい説明が評判のママ先生です。

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